第2回日伯イペーサミットに向けて

 

ブラジルの花を日本で広める活動、東京五輪で加速へ

 

イペーサミットを開催します。同サミットには、在ブラジルブラジルの国花、イペーを日本で咲かせる活動を続けている花咲爺 ( )の会(井川實会長)が4月22日、群馬県大泉町で第2回日本人や日本で試験栽培を始めている会員、さらにはこれから本格的に取り組もうとしている地元・大泉町、水害からの復興・異文化交流のシンボルとしてイペーの普及を目指す茨城県常総市の関係者らも参加し、専門家の基調講演を中心にイペーの栽培方法や課題などを話し合う予定です。この機会に、「イペーサミット」とは何か、サミットの果たす役割、そして、今後の展開なについてご紹介いたします。

 

「イペー」ってどんな花


落葉樹ノウゼンカズラ科で、南米に約100種類が分布し、成長すると10~15mにもなります。ラッパ型の花を多数つけ、花の色は一般的な黄色のほか紫や白などもあります。木目が細かく堅いことから、木材としての利用価値もあります。イペーは俗称で、イッペーとも呼ばれることもあります。学名はタベブイア。ブラジルでは、日本のサクラのような存在で、2020年・東京五輪のカラーの記念硬貨には、黄色のイペーとサクラがあしらわれています。

  

花咲爺(はなさかじい)の会とは

 

ブラジル在住の和田好司さんが2010年、長年の願いだった「イペーの花を日本で咲かせる会」を鹿児島在住の有隅健一さん、前田久紀さんとともに活動を始めましたが、耐寒性の問題でつまずいてしまいました。そこで採種地を吟味し、より寒冷な場所の種子を池田久成さんら(ブラジル在住)に提供してもらって挑戦したところ、有望な結果が得られるようになりました。そこで2014年6月、「花咲爺の会」を組織し、本格的な活動を始めました。この結果、会員や協力者が拡大し、メーリングリストだけで現在、日本とブラジル合わせ300人以上になります。

 

会の組織は井川会長をはじめ、事務局=小出立彦さん、栽培・技術=前田久紀さん(造園施工管理技士)、種子担当=和田好司さん、池田久成さんのほかブラジル在住の方々、技術助言=有隅健一さん(鹿児島大名誉教授)のみなさんが支えています。和田さんが管理者となっているメーリングリストでは、毎日のようにイペーの試験栽培の報告や取り組みなど活発な情報交換が続いています。

 

イペーサミットとは

 

 「イペーを日本で育て、咲かせよう」と願い、日本とブラジルで活動中の「花咲爺の会」会員およびその協力者が一堂に会し、各地での試験栽培の結果報告や、耐寒性など課題克服に向けて話し合う会議です。

 

 第1回イペーサミットは2016年10月、関東地方でイペーの地植えを開始していた千葉県一宮町で開催されました。氷点下9.1度に耐えたイペーの樹種が確認され、関東以北での試験栽培の可能性が出てきたこと、大泉町の大泉高校での苗の生育状況が順調で同町での地植え準備を始めたこと、イペーに関心を持った常総市から苗木提供の依頼があったことなどから、その対応などを話し合いました。

 

今回のイペーサミットの特徴は

 

これまでの試験栽培の成果や課題を整理し、会員同士が情報を共有すると同時に、これから本格的なイペーの試験栽培を始める大泉町や常総市の関係者に、イペーや栽培方法についての知識を深めてもらうのが目的です。

 

特に、今回は初めて「イペーの理解と育成方法」の主要テーマでの基調講演が盛り込まれました。有隅健一・鹿児島大名誉教授(農学)が「イペーの育種と問題点」、造園施工管理技士でイペーの試験栽培を数多く手掛けてきた前田久紀さんが「イペーの多種試験栽培~日本全国展開に向けて~」について、それぞれ話します。

 

また、花咲爺の会の当年度の具体的な行動計画を決定する予定です。

 

今後の展開は

 

南米産のイペーは耐寒性に大きな課題があります。さらに、広く屋外で広めるためには耐寒性とともに、早期にきれいな花をつける形質の樹種を探し出すことが重要です。幸い、花咲爺の会員である前田さんが会発足前の2000年から65種のイペーを試験栽培してきた結果、抜きんでて耐寒性に優れ、樹形や花が美しい樹種の確認に成功。通称「池前アルバ」(ロット№JS121117)と名付けられました。アルバは、黄色い花が咲く「イペー・アマレーロ(黄色)」の一種です。

 

「池前アルバ」は実際、播種から3年半後の2016年4月、山口県柳井市で9本が開花するなど成果を挙げています。前田農園で育った同じ樹種の苗木が2017年春、本格的試験栽培を計画している常総市に提供されることになっています。常総市では、行政と地元のボランティア組織「常総花咲爺の会」がタイアップし、より優秀な個体を選抜する育種を進めていく方針です。

 

これまで種子の採取はブラジルのみでしたが、今後、日本で自前の種子が入手できるようになれば実生から育てる機会が増え、常総市のような取り組みが大泉町をはじめ各地で展開されると期待されます。

 

特に、五輪の開催都市がブラジル・リオデジャネイロから東京にバトンタッチされたのを機に、日本国民のイペーへの関心が高まってきており、花咲爺の会の取り組みも拡大していくと思われます。