花談議228 ブラジルの“桜”広めたい 現地日系人の活動に共感、種の譲渡先探す 久留米・倉八さん [福岡県] 西日本新聞WEB版より
2018年04月17日 06時00分
倉八さんの自宅庭で黄色の花を咲かせたイぺー
久留米市国分町の倉八鈴(れい)子さん(69)が南米原産の落葉高木「イペー」の種の譲り先を探している。ラッパ形の可憐な花を咲かすイペーはブラジル国花とされており、現地の日系人らでつくる団体が日本にイペーをもっと咲かせようと活動していることを知り、協力を申し出た。戦前からの集団移民で苦難を強いられた日本人が春先に咲き誇る姿を桜に重ねた-。こんな逸話が残るイペー。倉八さんは「歴史を風化させないためにも大勢に育ててほしい」と話す。
4月上旬、倉八さんの自宅庭で育つイペーが見頃を迎えた。十数年前、当時勤めていた市世界つつじセンターの技術顧問が国際協力事業団(現国際協力機構)の園芸指導で南米に派遣され、現地でイペーの花に感動し、持ち帰った種を分けてもらったもの。いまでは3メートルを優に超える。
「もともと花を育てるのが趣味で、珍しいきれいな花としか思ってなかった」と倉八さん。2年ほど前、インターネットでイペーを調べていると日本人のブラジル移住者やゆかりの人たちが会をつくり、日本でイペーを広めようとしていることを知った。メールで交流が始まった。
国策による集団移民。夢見た新天地で過酷な環境に置かれた歴史に加え、日系一世の人たちがイペーに励まされ苦境を生き抜いたことを知った。以前から友人に自宅のイペーから採れた種や育てた苗木を分けていた倉八さん。昨年末、ブラジルから「九州でイペーを広めてほしい」との思いが込められた漬物瓶いっぱいの種が届いたという。
今年春には「サッカー少年たちに本場の花を見せたい」との要望に応え、神戸市のサッカー協会に苗木を贈った。倉八さんは「花がつないでくれた縁を大切にしたい」と笑顔を見せる。
=2018/04/17付 西日本新聞朝刊=
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