鹿児島の有隅健一先生からのお便りが届きました。
松村滋樹 様
ブラジルの皆様
イペー・ロッショの見事な写真をお送り下さり、有難うございました。
実はこのイペー・ロッショ(IR)の花期について、私は今なお解せない疑問を持っています。
それは今時分の冬咲きばかりでなく、秋咲きから、更にはもっと遡った夏咲きもあるのではないか、ということです(御地で一番多いのはやはり春咲きでしょうが。また熱帯性のTabebuia roseaの花期は不定期的のようですので、この「種」は省きます)。
1997年2月から4年余り、アルゼンティンでイペー・ロッショの育種に携わっていましたが、その時取り扱っていたIRは、私の解釈が間違いなければTabebuia heptaphylla(亜国ミシオーネス周辺原生で、ブラジル、パラグアイにも分布)で、耐寒性が強いことと相まって、ブエノス市内は勿論、周辺一帯に広く植栽されていました。
このTHは、葉があっては開花できません。つまり冬の間に落葉して、初めて開花可能になりますから、花期は春に限られることになります。春以外の開花は、凡そありえないのです。
一方、私は別のイペー・ロッショも取り扱っていました。それは在亜中にブラジルの平中信行氏から恵与された種子より育成した系統で、親木は平中さん苦心の選抜種でした。
ここで苦心の選抜種と言ったのは、開花特性抜群で、稚樹開花性の実生がどんどん出て来るという特性からです。添付した写真のように最小の個体は、播種から7.5カ月、止め葉まで僅かに8節、樹高13.5cmという、極ごく小さいサイズで開花しました。巨大な樹体になる高木のIRからは、凡そ想像もつかぬ現象でした。
この平中系は、植物学的にはブラジルに広く分布するTabebuia impetiginosaに間違いないと思っているのですが、その特徴は葉があっても開花可能という点です(勿論「葉なし」でも開花します)。それで平中系の後代実生を追っかけている内に、夏の間から開花するものが現れました。現地で2月、日本に直せば夏真っ盛りの8月開花なのです。
この性質をトコトン追求したら、イペー・ロッショの四季咲きもありうるのでは……、と考えていました。
そこでお尋ねしたいのですが、葉がある内から開花してくるT.impetiginosa――まだ葉が一杯付いている秋の間に開花する秋咲き、更に遡った夏咲きというものはないのでしょうか。
葉があると、花は目立ちません。しかし一方で、「濃密な着蕾は落葉を促す」という仕来たり(法則性)がこのIRにもあるようですので、花、花、花で覆い尽くされた、葉なしの秋咲きもあると思うのですが、如何でしょうか?
IRの開花生理を知る上で、ブラジルでの実態をご教示戴けると、有難いです。どうか宜しくお願い致します。
[なお、濃密な着蕾が落葉を促す典型例は、パイネイラです]
有隅健一