「花中花性」に付いての私の覚え書 有隅先生からのお便りです。前田さん 有隅です
「花中花性」については、添付ファイルに「私の覚え書」として纏めたものがありましたので、ご覧ください。 その写真(3頁)は和田さんのブログにあったものです。また6~7頁にかけて、この「花中花性」について、皆さんに説明をしていますが、DeVotoで見たイペーロッショの2ヶ月近くに及ぶ連続開花は、もっと細かな単位での小花の連続的形成でないと、ありえないと思っています(3頁の写真は、間の開き過ぎた大きな単位での新花房形成。だから「間が抜けた形」になっています)。
イペーの小花の花梗には、中途に節(生長点)があって、これが動いて新小花を作り(節の両腋芽が動くので2小花)、更にその次の腋芽が動いて2小花を作る、そしてまた次も――つまり2×2×2×2……という具合に小花が連続的に形成されて大きな花房になりますが、これが一時に(同時に)どっと咲いてどっと終るのではなく、次々に一方では咲き、他方では新花新生が起ると、DeVotoのような理想的な連続・爛漫開花がありうる、と思っています(DeVotoは、樹高20mという高い樹冠での現象でしたので、残念ながら手に取ってみることは出来ませんでした)。 「花房の中で遅れて咲くものがあるのでダラダラ咲き」だけでなく、花房中での新花の新生もある、ということです。但し、この現象を手の届く高さで確認したことはありません。何とかそのようなイペーを創り出したい、と言うのが私の夢です。 [16-10-17] Porto Alegre産のT.alba
<このPA-TAに「花中花性」があるという、証拠写真が見付かった。また前田さんによると、このアルバ(10本)は葉が小さくて成長が遅く(サンジョアキンの半分)、特異な性質を示しており、注目しているとのこと――であった>
2016年10月10日月曜日 タベブイア・アルバの種子の莢です。2016年10月7~8日に上総一宮で開催された自称「日伯イペーサミット」に参加された和田さんが持参されたものです。長さは約50cmです。 ポルトアレグレ市にタベブイア・アルバは1本しかありません。その様子は下記参照: http://kirishiman.blogspot.jp/2016/07/blog-post.html 種子の莢を提供された和田さんの記録です: ≪タベブイア・アルバの種子の莢≫ 採種時の写真です。
ポルトアレグレ出発の10月3日〈月)の午前中の散歩時に少し早いかと思ったのですが何とか種が取れるかなあと思い、手を伸ばして引きちぎって日本に持って来ました。前田さんと小出さんに1本づつ持ち帰って頂いたのですが果たして完熟した種が取れるかどうか?もう1週間置いておけばよかったのですが…… 莢採種時の写真を貼り付けて置きます。
<下の写真を、篤とご覧願いたい。開花結蒴をして蒴がかなりの大きさに達しているのに、その残存花穂(遺存花軸)内で新花穂が形作られ、それが開花している写真ではないか…… 「花中花」の形成というDeVotoの超長期開花のカラクリが、この写真に写っていたのだ。うっかり見逃すところだったが、DeVotoの動かぬ証拠が掴めた> メモ: 前田農園のイペーの中に、樹高4mものが2012年2月3日の零下7℃で根元まで枯れ下がり、そのひこばえが成長して、2015年2月9日の零下5.3℃では花蕾が全く傷まず開花した、宮崎から導入した樹種(多分T.chrysotricha)があります。このレベルでは日本全国展開は無理なのです。 昨年初めて1個だけ着蕾したものが、昨冬の零下9.1℃を無傷で乗り切った樹種(クリチーバ産のT.alba、播種4年目)があります。春先に蕾が膨らんだのですが、初産のためか葉の繁りが先行してアボートしました。初産でなければ開花しただろうと思っています。同種の樹高4mものが約20本、今年挿し根したものが約60本生長中です。同じトレーに播種した同級生が、温暖な柳井市で播種後3年目の昨春、数本が見事に開花しています。 これと同種のT.alba(ポルトアレグレ産)1種類を昨年11月から、サンジョアキン産7種類を今年2月から試験栽培して更に耐寒性の強いものを確認しようとしています。この樹種はサンジョアキンでは蕾が零下9℃に耐えて翌春見事に開花した経験があります。 ポルトアレグレ産10本が、葉が小さくて成長が遅く(サンジョアキンの半分)、特異な性質を示しており、注目しています。これらは、今回和田さんが持参された莢と同じ親木から採取された種子が育ったものです。大変楽しみです。
[16-10-17]■和田さん 皆さま 前田です。 名古屋のOB会から昼過ぎに帰着しました。 畑のイペーの巡視と、葉大根の間引きをしました。天候不順で野菜が倍値です。特に葉物が少ないのです。 和田さん、昨年11月に播種したポルトアレグレのT.albaが特異な成長を見せています。 他に比べて葉が小さく、成長速度が半分です。 親木の樹高をお聞きしたかもわかりませんが感じで結構ですのでもう一回教えてください。樹齢も知りたいですが判りませんよね。 一躍期待の星です。下記の最後のコメントを読んでください。 http://kirishiman.blogspot.jp/ <この「最後のコメント」が、上に引用した「霧島ツツジ日記」の最後の赤字部分である>
▼ 016年10月17日月曜日 前田さんが「霧島ツツジ日記」に、以下のような纏めをされた: ポルトアレグレは1種類、サンジョアキンは9種類のT.albaを試験栽培しています。ポルトアレグレとサンジョアキンの性質に大きな違いが出てきましたので、両者を比較します。サンジョアキンはSJ-4(19本)を代表選手にします。 ①播種時期はポルトアレグレが2.5ヶ月早いにも拘わらず、平均的な樹高が約半分です。仮に同時期に播種すれば、もっと大きな差がつくことになります。現在、SJ-4は2cm/日の速度で伸びていますので、全くの推測ですが1ヶ月分だけ補正すると、あと60cmは伸びることになり200~220cmになる計算です。すなわち、ポルトアレグはSJ-4の1/3の樹高ということになります。 ②葉の段数の平均はポルトアレグレが14段、SJ-4が18段で、節間寸法は75/14=5.4cmと150/18=8.3cmとなり、ポルトアレグレの方がSJ-4の65%と大変短いです。これも、①と同様の計算をすると、もっと大きな差がつくことになります。 ③サンジョアキンの9種類の内部比較はまだ難しいです。小型のものもあるようですが、全体的にポルトアレグレとは比較にならないくらい樹高が高いです。
生育の比較表(16-10-17計測)
この写真の左下の一番手前が、PAAの中で唯一生育が劣る個体だとのことであった [16-10-17]前田さんにメール: 前田さん 早速両アルバの生育に関する詳細な測定結果、有難く拝受いたしました。早速PCに取り込みましたが、その違いが一目瞭然ですね。 São Joaquimは播種時期が遅いのに、節数が多く、丈も2倍になっている……つまり、各節間が長い上に、生育中断期間とplastochron自体が短いが故に、このような大差を生じた、ということがよく判りますね。その上に葉もずっと小型であることも、大変な魅力です(公園樹などの広域植栽用では別ですが)。 T.albaですから、耐寒性がこのものだけ特に劣るということも考えられません。問題は幼若開花性で、これがあれば鬼に金棒ということになると思っています。 有難うございました。 <種子の追熟に関しては、後藤利幸さんのシャクナゲのデータを紹介しておいた。多分旨く行くのではあるまいか。前田さんには種子が採れたら分けてほしいと頼んだので、多分入手できることになると思う> <生育不良の個体の節数が、実生兄弟と同じだったら、つまり節間長が短かったら、これは面白い>
[16-10-18] 前田さん 和田さん 池田さん 「花咲爺の会」の皆さん 有隅です 和田さんのPorto Alegreの、T.albaの写真を見て、私が10数年に亘り探求し続けた「そのもの」に巡り会えて、あっと驚き、かつまた感動しました。 1997年8月19日、地球上にこのような美しい花があったのかと、自分の無知さ加減に恥じ入るとともに、一方では大感動をした日でした。モノはIpe roxo(Tabebuia heptaphylla)、場所はア国の職場に通う、DeVoto駅のすぐ横でした。車窓から見たのです。 実はこのIRが、そんじょそこらに例のない、大変な傑物だったことも、私には幸運としか言いようがありませんでした。それはその花期が普通の花木では凡そあり得ない長期……咲き出しから終りまでが、1本の樹で2ヶ月近くにも及ぶという、「三日見ぬ間の桜」とは真反対の素質を持っていたからです。 勿論、咲き出しと咲き終わりでは花数は少なくなります。が、その中間では爛漫開花が延々と続き、そして2ヶ月近く後に花が終わってからどっと新芽が噴出し、次の発育が始まるのです。大多数のIRがチラホラと開花して、直ぐに次の発育相に入るのとは、大変な違いでした。 この性質を持ったイペーを創り出したい……これが私の育種目標の1つになりました。そしてその「芽(手掛かり)」を今日まで探し続けていたのです。 さて、どうしたら1本の木で、2ヶ月近くの開花がありうるのでしょうか? そのヒントは、近縁のTecomaにありました。Tecomaはその系統の如何によって、開花後の花穂の遺存軸から、新しい花が新生されることがあるのです。このような開花後の咲き柄から新しい花が生じる、そしてその新生の繰り返しがイペーでモノにできれば、2ヶ月という長期連続開花も夢ではないことになります。 添付した写真が、その証拠です。発育途上の蒴と開花中の花が同一花房の中に同居していますよね。 (1)このような花の新生が (2)花穂軸の各所で、それも小さい単位で、繰り返し起こること (3)それも樹冠全体の全花房で同時並行的におこること (4)そうすればDeVotoのような、1本の樹で延々と爛漫開花が続くことになります 発生時を異にする枝に経時的に開花を続ける、四季咲きということがありますが、一時に開花する花数はどうしても少なくなります。これに対してDeVotoのような開花は、春1回だけの開花ですが、爆発的な爛漫開花を かなりの期間に亘って、楽しむことが出来ます。 イペーの開花特性からは、2つとも望ましい素質で、道は遠いですけれど追い続けたいと思ってきました。
和田さんにお願いですが、この現象はPorto Alegreのこの個体でたまたま見られた現象でしょうか。それとも常時起こっていることでしょうか。教えて戴けると有難いです。 池田さん、Curitibaのイペーでは如何でしょうか。このような「芽(手掛かり)」を持つ採種母本が見付かったら、それこそ感激モノです。「そう言えばあの木は、随分長いこと咲いていたなぁー」というのはなかったでしょうか。それも裸の樹のままで……
前田さん 有隅です
「花中花性」については、添付ファイルに「私の覚え書」として纏めたものがありましたので、ご覧ください。 その写真(3頁)は和田さんのブログにあったものです。また6~7頁にかけて、この「花中花性」について、皆さんに説明をしていますが、DeVotoで見たイペーロッショの2ヶ月近くに及ぶ連続開花は、もっと細かな単位での小花の連続的形成でないと、ありえないと思っています(3頁の写真は、間の開き過ぎた大きな単位での新花房形成。だから「間が抜けた形」になっています)。
イペーの小花の花梗には、中途に節(生長点)があって、これが動いて新小花を作り(節の両腋芽が動くので2小花)、更にその次の腋芽が動いて2小花を作る、そしてまた次も――つまり2×2×2×2……という具合に小花が連続的に形成されて大きな花房になりますが、これが一時に(同時に)どっと咲いてどっと終るのではなく、次々に一方では咲き、他方では新花新生が起ると、DeVotoのような理想的な連続・爛漫開花がありうる、と思っています(DeVotoは、樹高20mという高い樹冠での現象でしたので、残念ながら手に取ってみることは出来ませんでした)。 「花房の中で遅れて咲くものがあるのでダラダラ咲き」だけでなく、花房中での新花の新生もある、ということです。但し、この現象を手の届く高さで確認したことはありません。何とかそのようなイペーを創り出したい、と言うのが私の夢です。 |